舞台『日本総合悲劇協会vol.6「業音」』

2002年、主演に荻野目慶子さんを迎えて上演された舞台『業音』。15年の時を経て今年再演されました。松尾スズキさんのメッセージを公式サイトから引用します。
初演の業音を演出している間中、俺の心には土砂降りの雨が降っていました。主演女優さんにいい思いをさせたいという気持ちと、主演女優さんをめちゃめちゃにしたいという思いが常に葛藤していたのです。そして、結果としてこの人に恋をしてはいけない!とも。
スキャンダラスな女優と対等に付き合うことの激しさをわが身に叩き込まれました。思い患っておりました。千秋楽は、まるで、失恋のようでした。
俺は思うのです。この作品を彼女への失恋に似た気持ちで終わらせたままでいいのか。それから15年、業音はこのたび、新たな地平に鳴り響きます。歳をくったらくったなりの、死にもの狂いな俳優の姿を、どうぞごらんください。

松尾スズキ

15年前はまだ舞台というものを観たことがなかった。と、言うより興味すらなかった。舞台を観ることが好きになり、特に『大人計画』は毎回欠かさず観たい劇団でもあるので、『業音』の再演が発表され2002年の『業音』について調べると「これは必ず観ないとダメなやつだ」と思い、2017年版である『日本総合悲劇協会vol.6「業音」』を池袋、芸術劇場シアターイーストで観てきました。
【作品詳細】
母の介護をネタに、演歌歌手として再起を目指す落ちぶれた元アイドルの女は、借金を返すためにマネージャーと共に自身が運転する車で目的地に向かっていた。途中、自殺願望を持つ夫と夫をこの世につなぎ止める聡明な妻と遭遇し、不注意から妻を車ではねてしまう。妻は脳を損傷し、一生涯植物人間として生きることに。怒り狂った夫は、責任を迫って女を拉致連行し、“有罪婚”と称し2人は結婚。奇妙な共同生活が始まる。
芸能界を夢見て東京に出てきたものの、結局体を売ることでしか生きていくことの出来ない堕落した姉弟、年を偽わってまでも孤児院に入ることに執着する屈折したゲイの男、正体不明の老婆らを不幸のループに巻き込み、負の連鎖は更に奇怪にうねってゆく…。やがて、マネージャーとも関係を持つ女は、父親がわからない子を身ごもり出産するのだが、夫との時間に執着し、子どもの命を引き換えにしてまでも、「10か月の夫婦生活の元を取るため」と夫とのわずかな触れ合いを選択するのだった。“それ”をやらなければ物事は上手く運ぶのに、どうしてもやらずには先に進めない各自の“固執”。その“固執”が“業”を生み、空回りするそれぞれのエネルギーは、不協和音のような音楽を響かせてゆく…。

【作・演出】松尾スズキ
【出演】松尾スズキ、平岩紙、池津祥子、伊勢志摩、宍戸美和公、宮崎吐夢、皆川猿時、村杉蝉之介、康本雅子+エリザベス・マリー(Wキャスト)
(上演時間/120分)

観劇後の感想としてはまず「凄いものを観た」この一言に尽きる。松尾スズキさんが描き、実力あるキャストが創り上げた世界。そこに平岩紙さんが全力でぶつかる。
本当に凄い。
素晴らしい。
この「凄いものを観た」感はなかなか味わえない。大人計画ほどの劇団でもなかなかないかもしれない。この作品の持つパワーと、演じた俳優陣のパワーがぶつかって物凄い素晴らしい作品になっていた。

人の「業」が「業」を呼ぶ。誰かのせいではないけれど、一度踏み外したレールは簡単には戻らない。踏み外したレールは行くとこまで行くだけなんだ。
人には誰しもその人なりの「業」を抱え、その「業」を背負って生きている。
その「業」はまるで「音」のように自身の心に響いてくる。救いがなくても進んでいくしかない。人はそうやって「業」と共に生きていく。

平岩紙さんが本当に素晴らしかった。映画『At the terrace〜テラスにて』を観たときも思いましたが、彼女は台詞がなくても表情と仕草だけでその時の感情を表現できる女優さんだと思います。「女優なら当たり前」かもしれませんが、大きな動きや台詞を入れず舞台でそれができる人ってなかなかいないと思います。大人計画の層の厚さを感じました。

今回の15年ぶりの再演も大好評とのこと。次はいつ再演されるかわかりませんが、この作品はこれからも続いていってほしい。次回もあれば必ず観に行きたいと思います。



『後悔と反省の狭間で』

なんとなく思ったことを、ただなんとなく書いています。映画や舞台が好きなのでそのあたりの記事が多めになります。

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